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2005/08/31

薄情者

「コーヒ、好きなんです」
そのお店を教えて頂いたのは六月頃だった.
そして再び彼女は電話口でそう告げると、
応えを待つかのように押し黙ってしまう.

素直に〝ええ、行きましょう〟と言えばそれでいい筈だった.
そうに決まってるじゃないか.大体、含みのある誘いでもない.
それが全てを台無しにして受け流してしまった.
有体に言えば〝お断り〟に等しい。

何故、こんな他愛もない事にガードを高くしているのか、
未だに上手く説明が付きそうになかった.
そして当たり障りのない返事ほど失礼なこともなかろう.
そんな事など百も承知しているさ・・・ ・・・

「・・・じゃあ、いつか何処かで」
電話の向こうで苦笑している様が伝わると、
益々、遣り切れない思いでいっぱいになる.

「・・・宿題になっちゃたな」
これが精一杯の言葉だった.
彼女への仕打ちは、これで何度目になるのだろう.
こんな事なら、もっと早くに訪れておくべきだった.

まあ今からでも遅くはない.
あのコーヒの美味しいお店へ行こう.
そして、そこからメールを打とう.
運が良ければ貴方にお会いできるかもしれない.
そんな距離感が丁度いい.

お店のオーナは同じ IVORYのバイク乗りだという.
バイク仲間の彼女は、偶然、その事実を知り、伝えてくれた.
嬉しかった、有難かった、逢いたかったさ.

でもなあ・・・
約束することで、先々の不安を抱えるよりも
気楽にバイクを走らせることを優先させてしまう.
例えそれが薄情者と呼ばれる距離感であっても、
今の自分には、どうしようもない現実なんだ.

まったく面倒な奴だと笑ってやって下さい.
そして、もう少しだけお待ち頂けますか.

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